free paper Dio(ディオ) vol.9  2011.2.1      information         page1

 大正100年”を学ぼう!!

 夢二の「宵待草」がうたわれ、露風の童謡「赤とんぼ」が生れた時代、・・・

 大正の年号で数えると、2011年は大正100年となります。次の2012年は、大正元(1912)年の100年後となり、私たちは、大正時代の100年後を生きる時を迎えます。大正期は、10数年のエポックでしたが、特有の文化を生み出しました。その100年の文化に、Dioの会は注目します。

≪近刊のお知らせ≫(予告
   
     『「宵待草」ノート‐竹久夢二と大正リベラルズ』

          
Dioの会編/品川洋子著 はる書房刊 1000円(税別)

自由と恋愛に憧れた文芸系譜のなかでも独自な歌「宵待草」のあり方を探ります。夢二における“草”の概念について雑学。大正リベラリズムを夢二に見ます。図版約42点。

    お問い合わせ先:はる書房 電話03-3293-8549URL  www.harushobo.jp

  <既刊書 review 1>

     『三鷹で暮らした「赤とんぼ」の詩人三木露風』

     (財)三鷹市芸術文化振興財団編 

                  
   佐藤伸宏、和田典子、品川洋子、
   石澤いづみほか著

   福嶋朝治 監修    
   
      はる書房刊 
1000円(税別)
    大正期に生まれた童謡「赤とんぼ」
   と露風の生涯を、三鷹に残されていた
   新資料により探究する。

遊・学 あんない

  vol.9  2011.2.1   改定

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編集発行 Dioの会  代表 福嶋朝治

山梨県北杜市小淵沢2957-1 

電話 0551-36-6052
eメール kizansou@mx3.nns.ne.jp

free paper Dioは、HP「三木露風文学館URL:http://www3.nns.ne.jp/pri/kizansou」から
お届けします。  
Dioの会HPhttp://www.justmystage.com/home/dio)もご覧ください。




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  <既刊書reviewⅡ>

     『大正・昭和の“童心”と山本有三』

       山本有三記念館編 

    上笙一郎、宮川健郎、遠藤寛子、中村悦子、本間正幸ほか著
       笠間書院刊  1400円(税別)
   大正期の童心主義と有三の昭和の児童叢書について、多彩な児童
  文学研究者による論考。

 『三鷹という街を書く太宰治
「陋屋の机に頬杖ついて」』
     Dioの会編

      宮川健郎、土屋忍、福嶋朝治、
      品川洋子 共著
      はる書房刊 
1000円(税別)


  時代の変換期に三鷹の街を書いた太宰
  作品を紹介。ゆかりの地域と文学につ
  いて考察。
『赤とんぼ 三木露風童謡詩集 』( CD付き
 編集/福嶋朝治  解説/三木 卓  上 笙一郎
 歌/稲村なおこ  ピアノ/長谷川芙佐子
 ネット武蔵野刊  定価1524+税

日本人の郷愁をかきたてる名曲・赤とんぼ。
山田耕筰をはじめ多くの作曲家が曲 をつけ
た三木露風の詩には、日本人の誰もが感じる
懐かしさの原点がある。

 露風は大正7(1918)年、『赤い鳥』8月号に「毛虫
採りを発表して以来、昭和初年代まで多くの童謡を
制作している。本書はその中から」77
編の詩を精
選して
収録した。
 また、「赤とんぼ」をはじめ、「青蛙」、
「夕焼け雲」、「秋の夜」など日本歌曲とし
ても有名な6曲を、稲村さんが歌っている。




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書評 

関口安義著『評伝 長崎太郎』

(日本エディタースクール出版部/20101020日/定価5500円) 

布川 純子(神奈川工科大学非常勤講師)

 筆者関口安義氏は芥川龍之介研究者して知られているが、芥

川を研究する上からその周辺人物も研究対象とし、多くの評伝

を発表している。本書もそうした評伝シリーズの一冊である。


 あとがきによれば、評伝としての既刊行書籍は『評伝豊島与

志雄』(未来社/
198711月)に始まり、松岡譲、成瀬正一、

恒藤恭、藤岡蔵六らのものがあるそうだ。芥川の評伝としては

『芥川龍之介とその時代』(筑摩書房/
19993月)がある。
 さて長崎太郎は、前述に挙げた評伝人物らと同様、芥川龍之

介の一高時代の友人で、戦前・戦中・戦後を通し教育者として

活躍、その生涯を全うした。
 筆者は、長崎太郎について、早くから関心を抱いていたそう

だ。その理由を、あとがきで次のように述べている。

 第一に
1910(明治43)年、芥川らが無試験で一高に合格した

際トップが長崎であったこと。ちなみに芥川は4番であった。

 第二に菊池寛が一高を退学させられたいわゆるマント事件

で、菊池の退学を阻止するため奔走した人物であったこと。

 第三に長崎は、芥川も魅了されたイギリス詩人で画家・版画

家でもあるウィリアム・ブレイクの、収集家であったこと。

 長崎の資料はなかなか集まらなかった。だが、豊島らの研究

を続けているうちに、彼らの日記から長崎に言及した部分を発

掘したことと、長崎のご家族からの資料提供があったことで、

ようやく長崎の評伝をまとめるにいたったということである。

 新資料の中でも菊池寛退学事件の真相が明らかになったこと

は興味深い。これまでこの事件は、菊池の「半自叙伝」と、退

学事件を自ら素材にした菊池の小説「青木の出京」の内容など

から、「事件を知った級友の長崎が心配して菊池のもとを訪

れ、退学の事情を尋ねたので真相を語った」と理解されてき

た。ところが実際は、菊池がクリスチャンである年下の長崎の

下宿にやってきて、長崎にだけ真相を明かし、他言はしないよ

う宣誓までさせたというのである。真実を知り苦悩した結果、

長崎が菊池の無実を訴えて奔走したことが、長崎の日記や当事

者たちの新たな書簡から明らかになった。今後の菊池寛の研究

にも大いに貢献することであろうと思われる。
 なお、本文初出は、『都留文科大学研究紀要』第63集(2006
3月)~第69集(20093月)である。


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雑学者の弁明

                                宮里 立士                             

もともと自分の「専門」の研究とは何なのか、よく解らなかった。

 既存学問の、「専門」にはうまく当てはまらないという違和感を前

々から抱いていた。それが所属をどこにも持たない身となって、い

っそう解らなくなった。ときに歴史学の領域の解題・解説を書き、

文学研究に渉る仕事や研究会に参加する。そして沖縄に関するもろ

もろの文章を依頼されて執筆。以前は思想史という便利な「専門」

に逃げこんでいたが、その「研究者」たちと実際に付き合ってみる

と、どうも違う「人種」らしい。

 
別に無理に「専門」などに立て籠らなくてもいいのかもしれない。

最近はそういう感じで「研究」というか、自分の仕事をしている。

それでもときどき、「ご専門は?」と聞かれ、答えに窮する。「日

本近代の精神史を勉強しています」とか(思想史よりはこちらがシ

ックリくる)、「あぁー、そういえばたまに、近代以前のこともや

るな」と、思いだし、「日本研究、といった感じです」と答えたり

する(それも漠然として、何が「専門」とは思うのだが……)。は

ばひろく活動していると、云いたいが、その割りには細々とした仕

事や研究だ。
 
 
 史料復刻の編集のアルバイトのようなことが主たる収入源。その企

画の調査のような下調べをする。すると、なまじっかの研究者より

その史料に詳しくなる。解説者を誰にするかの段になり、適任者が

他にいない場合、自分に白羽の矢が立つときがある。最初は少し心

配しながら書く。が、もちろん調べ自体はちゃんとするので書き終

えて、他と比べてそんなに遜色ないとの自負と責任は持つ。

 
 日本近代の文学関係が今いちばん「専門」といえるかもしれない。

その論文もたまに書く。本来が史学出身なので、論文のスタイルが

違うのではと、気になる。それでも調べだけは常に心掛ける。もち

ろん至らないところはあろうが、典拠を明示し、それにもとづき論

旨を展開する。とりあえず「ヘンな論文」という批判は聞かない。

  
あるオピニオン誌から沖縄に関する寄稿を求められ、昔から関心の

あった近世琉球の文芸についての連載をしばらく続けた。すると、

一般読者から、その専門家と誤解された(もちろん、そうではな

い)。自分でも解らない「研究」を続けていたら、思わぬ「世界」

に迷いでたようだ。


 これからどこまで歩き続けるのか? それは知らないが当分は歩

いてみたいと思っている。

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三木露風と海水館

福嶋朝治

 海水館というのは、現在の佃3丁目にあった割烹旅館です。海に面したこの

一角は景勝の地であったことに目をつけ、坪井半蔵という人が仙台にあった

待合を移築して建てたといわれます。
2階建てで中一間の廊下を挟んで20

部屋が並んでいました。都心に近い利便性と閑静な環境が多くの文人墨客に

愛されました。たとえば島崎藤村は明治
41年から翌年にかけてここに止宿

し、「春」を執筆しました。他にも小山内薫、吉井勇、竹下夢二などがここ

を利用しています。
 露風がこの下宿兼旅館に滞在したのは、大正2年の夏から翌年の1月にかけて

のことです。明治
4311月、詩集『寂しき曙』を刊行してからの露風は、肉

体的にも、精神的にも不健康で退廃的な生活を送っていました。
2年間とい

うもの酒色に溺れたり、入院したり、下宿を転々としたり、東海道を放浪し

たりします。その間、仏説に救いを求め、キリスト教に真理を探り、「悪い

文明に中毒した」結果の「悲劇」を経験しながら、自己再生の道を模索して

さまよいます。そうした巡礼者のような身を癒す場所として、大正
27月こ

の海水館に止宿します。
25歳の時です。
 ところが、ここでの生活は、蘇ったように活気にあふれるものとなりまし

た。その一つは
9月に刊行した詩集『白き手の猟人』の好評でした。これを

もって露風は詩壇の地位を確固たるものにします。露風のもとには若い詩人

たちが集まるようになり、彼らを束ねる形で未来社を結成し機関誌『未来』

を発行するにいたります。もう一つは、そうした尊崇者の一人竹内勝太郎と

の交友です。竹内は関西にあって、在京の知人である浅井都譽を介して東京

での就職の斡旋を依頼します。露風はその竹内に実の弟のように親愛のこも

った態度で接します。その一方で彼は新宿十二社で知り合った栗山なかとの

交際を深めていきます。そして大正
3年の新春早々、池袋郊外に新居を求め

て、この地を去ります。いわば独身最後の活動の場であったわけで、それだ

けかれにとっては思い出深い場所となりました。後年詠われた次のような短

歌がその間の事情を物語っています。
 都なるここの荘はもひんがしに水平線を見て舟もなし



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 大座敷微風吹き入り人は只ふたりのみにて夏は涼しき
 月島の広き草原風吹きて東の風の涼しかりけり
 我れ奥のひとまにあれば浄机のみ黒く光りてしずかなるかも
 気清く室閑にして黙想と美とをかねたるこの水郷よ
 或時は舟よりわれを呼びかけし少壮の人友もありけり

 藤村も二階の右手奥の間で執筆したといいますから、ひょっとして露風が

使ったのも同じ部屋であったかもしれません。吉井勇も「二階の西隅にあ

る部屋」といっていますから、この部屋が長逗留する作家たちの専属の部

屋だった子も知れません。「黙想と美」という表現に以下にも露風らしい

心境が読み取れます。また、「少壮の人友」は、いうまでもなく竹内を懐

かしく思い出したのでしょう。
 「黙想と美」とは、具体的には『白き手の猟人』の世界でしょう。この詩

集の体裁は、詩作品の間に数編のエッセイが織り込まれたものです。エッセ

イには、有名な「冬夜手記」に代表される彼の象徴主義に対する思索がつづ

られています。また、「照応」では、「すべての詩美は輪郭にあるのではな

く、音楽的な気分にある」として、「日が沈んだ後の大河付近は、さまざま

な香気に満ち、物とも知れぬ音響を雑へ、色は幾度となく複雑に変化する、

この間には少くとも統一した気分がある。それは徐徐として形造る黄昏の調

子である。沈黙した白日の風がそこで憩にで居る。消え去ってしまった筈の

太陽は、しかしまだ岸の柳に、赤い幽霊を残すのである」と河口の夕景が印

象的な筆致で描かれています。

≪“馬込早苗の会”のご紹介≫

「三鷹の山本有三記念館を訪れたこともあります・・・。」 

 馬込早苗の会、別名、大森文学散歩の会の講師を務めている神谷早苗さんに、大田

区での活動についてお聞きしました。元、日本近代文学博物館の学芸員だった神谷さ

んは、約10年前に、大田区の文化センターの文学講座に集まった方々約20名と、月

一回、第一木曜日の文学散歩を始められました。区に市民活動として登録するにあた

り、ほかの文学散歩団体と同じような名称になることを避けて、神谷さんのお名前か

ら“馬込早苗の会”となったそうです。

大森文士村あたりの作家ゆかりの地をめぐるだけではなく、『白樺』100年を記念

して実篤の新しき村美術館(埼玉県)にも出かけました。太宰治文学サロンを訪れた

時は、市民ボランティアの案内で太宰旧居近くまで歩きました。
大田区でも、有料

すが、馬込文士村散策のボランティアガイドの活動があります。

 最近では、各地で文学散歩を楽しむ方が多くなっていますが、長く続いているの

は、メンバーの方々の結束があるからでしょうね。






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工事中の東京駅で、夢二が降りた広場とそびえるドームを想う。

 首都の象徴のひとつである東京駅は、現在、白い工事用の布で覆われ、赤煉

瓦の駅舎は隠されている。
2012年春には改装工事が完成して、今日的な機能

が加えられ、同時に大正
3年竣工当時の外観が現れる予定である。辰野金吾設

計の東京駅は、大戦の空襲で焼け落ちたままだったドーム部分が復元されるの

である。
 大正期の旅人、竹久夢二には、彦乃という女性との恋の顛末を伝える歌があ

り、そこに詠みこまれている東京の建築に、協会と駅がある。前者は、彼女と

の逢瀬を題材にした歌に登場する神田のニコライ堂こと東京復活大聖堂であ

る。
J・コンドル設計、明治24年築のニコライ堂のドームも、大正の大震災で

損なわれたが後に復元された。後者が、彼女との京都での生活に破れて、自分

の息子、不二彦を連れて帰り着いた東京駅である。(歌集『山へよする』大正

8年より)
  ニコライのホールに入りて相抱きサンタマリアを拝みにけり(サンタ・マリア

  親と子が知らぬ他国へきたやうに悄然と下りる広い停車場(東京駅

 二人の交際は、彦乃の父親から許しをもらうことができなかった。逃避行な

ど複雑な経過の後、彼女は順天堂病院にて
25歳で病死する。彼らの悲恋は、

古都をも巡ったが、教会、駅、病院という国際性を持った西欧建築が形成する

近代都市を拠点としていた。
 夢二が生きたころの東京は、丸の内界隈も広々として視界が開け、ドームを

掲げた赤煉瓦の駅舎がそびえていたのだろう。それから百年近くの間、四角く

て巨大なビルが林立してゆき、都市は立体化した。建築なしには有り得ない都

市に、歴史的で装飾的なドームが再生するのは、原点への回帰願望からであろ

うか。
 夢二は、自らの燃焼をうたう短歌に、時空を超えた都市エネルギーとしての

近代建築を詠み込んだ。それは、彼の悲恋の舞台であり、また、夢二式の文明

批評にスクリーニングされた聖なるドーム建築であった。(ひ)


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 企画名など

期間 (休館日は原則月曜)

料金     

開催館/アクセス


百花繚乱!挿絵の黄金時代展
~懐かしき昭和20~30年代の挿絵画家たち~


3
/27(日まで

一般¥900
大高¥800
中小¥400

弥生美術館
文京区弥生2-4-3
sub
千代田線 根津駅,
南北線 東大駅前共に徒歩7分 
TEL 03-3812-0012


竹久夢二 図案と装飾展
 -千代紙からポスターまで、デザイナー・夢二の試み

同上

弥生美術館と共通券


竹久夢二美術館
文京区弥生2-4-2
TEL
 03-5689--0462 

 特集展示
   城所祥の木口木版展

3/21(月)まで

一般 \100 
学生(小学生以上)・
65歳以上¥ 

八王子市夢美術館
八王子市八日町8-1
ビュータワー八王子2F
TEL
 042-621-6777


収蔵コレクション展 10
 中山義秀展
  

2/27(日)まで

一般 ¥25
20
歳未満・学生 ¥150

神奈川近代文学館
横浜市中区山手町110
TEL
 045-622-6666

旅する絵描き
 いせひでこ展
 

2/11(金)~3/31(日

一般¥700
大・高¥500
65歳以上・身障者¥350
中以下無料

世田谷文学館
世田谷区南烏山1-10-10
TEL
 03-5374-9111

 企画展
実篤グッズ展ー生活の中の美

2/27(日) まで

大人 ¥200
小中 ¥100
 

調布市武者小路実篤記念館 
調布市若葉町1-8-30 
TEL
 03-3325-0648
京王線仙川駅下車徒歩10分

収蔵品展
直筆の魅力

3/27(日)まで

無料

山梨県立文学館
甲府市貢川1-5-35
TEL
 055-235-8080
甲府駅南口6番バス 県立美術館下車

特別展 ぐんまの雑誌展
 

3/13(日まで

一般¥200 
大・高¥00
中学生以下無料

土屋文明記念文学館
高崎市保渡田2000
TEL
 027-373-7721

収蔵品展 鎌倉文人録シリーズ5 
 
華やかな世界をつむぐ
シナリオ作家・劇作家 In KAMAKURA
 

4/24(日 まで

大人¥300
小・中学生¥100

鎌倉文学館
鎌倉市長谷1-5-3
TEL
 0467-23-3911
江の電由比ヶ浜駅下車徒歩7分

企画展
  小説家・山本有三の時代
   -「生きとし生けるもの」から「波」までー

2/20(日)まで

一般¥300
中学生以下無料

三鷹市山本有三記念館
三鷹市下連雀2-12-27
TEL 0422-42-6233